Shinzoneスタッフのオシャレ遍歴を辿る本連載。ファッションへの愛と矜持を持って、お客様そして洋服と日々向き合う私たちのこだわりを公開します! 今回は生産を担当。常にミニマムなスタイリングに、さりげなく個性を光らせるクリエイティブチームのデュオ栗原悠季と 濵﨑真由美の着こなしを公開。ワーキングスタイルが常にリンクコーディネートになりがちな二人の着こなしをご覧ください。
関西そして関東で。高校時代の「古着の花柄ワンピ」からリンクコーデは始まっていた。
2023AWで人気を博したTHE SHINZONEの「BAGGY JEANS」に合わせたのは、シルエットとサイズ感がピッタリで気に入っているという2024年の春に展開した同じくTHE SHINZONEの「LOTUS JACKET」( 現在は完売 )。インナーにはウルフのモチーフが効いたヴィンテージのTシャツを。「動物が好きなので、その手のアイテムを見るとつい手に取ってしまいます」という濵﨑。シューズは数年前の「Little One Vintage」。スエードの色と質感が気に入っている。
顔まわりにはゴールドを、手元にはシルバーを合わせるのが日々アクセサリーをつける上でのセオリー。
濵﨑:父が洋服にこだわりがあり、常におしゃれに気を遣っていたこと。さらに母が洋裁が得意で、洋服をよく作ってくれていたことから、ファッションがすぐそこにあるという環境で育ちました。パーカ、ジーンズもしくはシャカパンに、足元は「コンバース」のワンスター......中学生の頃にはそんなボーイッシュなスタイルに夢中になっていました。高校生になると、ますますジーンズに夢中に。古着の花柄のワンピースにジーンズをレイヤードしたスタイルで、よくアメリカ村を歩いていました。
栗原:母、祖母、そして叔母が日頃から洋服を作っていたので、小さな頃から服づくりがとても身近にあって。着飾ることより作る方に興味があり、チラシで洋服を作っているような子供でした。とはいえ、高校生になるとやっぱり着る方に興味が湧き、竹下通りの安い古着屋さんで買った花柄のワンピースにジーンズを合わせるみたいなスタイルをよくしていました。販売員を経て、生産管理などに携わるようになりShinzoneへ。巡り巡って子供の頃に日常的にしていた、洋服を作るという職業に就きました。
栗原自身が制作に携わった「SUVIN HALF SLEEVE CARDIGAN」は目下のお気に入り。Shinzoneの定番アイテムにしてベストセラーの「CHRYSLER PANTS」を合わせたネイビー×ネイビーによるワントーンコーディネート。インナーに合わせたTHE SHINZONEの「PACK TEE」の白Tシャツ、「NEW BALANCE 」M992の白とグレーをさりげなくアクセントに効かせたミニマルなスタイリング。
「そういえば昨日のコーディネートも全身黒でした。最近は黒を基本にネイビーを足す、みたいなダークトーンでまとめることがほとんどです」という栗原。ニットが好きで、クロゼットにはダークトーンのニットが襟付き、襟なしとグラデーションをつけながらずらりと並んでいる。全てTHE SHINZONEのもの。
濵﨑:私は洋服に興味がある一方で車にも興味があって。車関係の仕事に就きたいという夢もあり、高校卒業後は一旦英米語を専攻。ですが、最終的に学び直してファッションの道へ。他社での企画やパタンナーを経てShinzoneへ入社しました。今は栗原さんと席を並べ、二人で生産管理や企画を担当しています。具体的にはデザイナーからの「こういうものを作りたい」という希望に対して、生地や糸などを提案したり、工場さんとやりとりする。というのが業務のメインですね。
栗原:デザイナーが手がけるデザイン作業とは別に、生産チームとして洋服づくりで提案しているのは、お客様が取り扱いやすい素材や、プライス設定ですね。コロナ禍以降、「洗えるかどうか」を気にされるお客様が増えたので、できるだけケアしやすい素材を提案することを心がけています。お客様の声やリクエストには全ては無理でも、できるだけ応えられたらと日々ものづくりに向き合っています。
濵﨑:私はデニムやパンツの加工に携わることが多いのですが、そこでは何度も洗いをかけたり、乾燥機にかけたりとテストを繰り返します。履き心地や、肌触り、そして発色。毎回こだわりを持って工場の方々と加工作業に取り組んでいるので、お客様にはとにかく一度足を入れてほしいし、袖を通してほしいです。そうしたら、きっと他のデニムやパンツとの違いを実感していただけると思っています。
そんな二人のスタイリング、最前線
まるで示し合わせたかのようにリンクコーディネートとなることが多いふたり。たとえば、Shinzoneのエッセンシャルアイテムとなった「DADDY SHIRT」。栗原がホワイトのそれに自身が生産担当した「KNIT PANTS」パンツを合わせれば、濵﨑はブルーのそれに自身が生産に携わった「WASHED BAKER PANTS」を合わせ、さらにはシューズも同じブラックという具合。
濵﨑:かつてはそんなボーイッシュなスタイリング一辺倒でしたが、今はパンツをベースにしたシンプルなカジュアルが好きです。自分のコーディネートを考える際に、一番重要な要素は天気と気温。靴がすごく好きなので、天気からその日の一足を選んで、その日のスタイルを考えていきます。靴に関しては、靴好きの父の影響が大きいのですが、高校生の頃には靴ベラを日常的に使い、さらには靴磨きセットで日々手入れをしていました。今もスニーカー含め全ての靴には必ず靴ベラを使いますし、会社についたらまず靴を室内用のシューズに履き替えます。
共に日々デニム生地やパンツの新素材、ニットの編み地見本などに囲まれながら仕事を進めている。「制作期間中は、こんな洗いにしたい、こんな色を出したいとテストを重ねるので、デスクも棚もデニムのサンプルが山積みになります」(濵﨑)
栗原:私は基本ワードローブが黒ベースですが、まずはその日のボトムを選んで、そこに何を合わせるかを考えていきます。考えたら昨日も全身黒でしたし、気づけば今シーズンは黒しか買わなかった!みたいな時もありますね。そのくらいワードローブが限られた色で構成されています。
濵﨑:私は「素材はメンズでシルエットはレディース」というアイテムが好きなのですが、それってまさにShinzoneで展開しているアイテムそのものだなあと。色だと黒、ネイビー、白、カーキ。そしてジーンズのインディゴ。使う色は少ないです。また手入れしながら大切に長く着られるものが好きなので、ベーシックで飽きのこないもの、が洋服を選ぶ基準になっているように思いますね。もちろんヴィンテージやミリタリーの要素も好きなので、そういったテイストも欠かせません。
とある日のリンクコーディネート例。共にこの夏愛用しているTHE SHINZONEの「ARALIA JACQUARD BLOUSE」をそれぞれエクリュ、ブラックをチョイス。濵﨑が合わせたのはヴィンテージの「ラングラー」のデニムジャケットと、サイズがぴったりだった同じく「ラングラー」のボーイズのヴィンテージジーンズ。栗原はヴィンテージのリーバイス505を合わせて。「シンプルなシャツなのですが、生地感が女性らしいところが気に入っています」(濵﨑)。それぞれ足元はヌーディなサンダルと、「メゾン マルジェラ」のタビ。「お互いにこれを明日着るよとか、シーズンの買い物の計画を話すことはないのですが、出社してお互いのスタイリングを見て『あ!』と(笑)」(栗原)。その阿吽の呼吸が、ブランドのものづくりにポジティブなムードを生み出している。写真下は濵﨑が着用したデニムの上下ほかコレクションからの一部。レアなサイドジップのデニムも。
栗原:入社して9年目になりますが、やっぱりモノづくりは楽しいです。好きなことをさせてもらいながら、なおかつ自分のいいなと思った洋服をお客様に送り出させる今の環境は、とても恵まれているなと思います。「私たちは洋服を作っているのではなく、工場さん、生地屋さん…みなさんに洋服を作っていただいている」という考え方もShinzoneがものづくりで大切にしていることのひとつです。これからもその気持ちを大切に、洋服づくりに携わっていきたいです。
休日は残布や不要となったサンプル生地を使って小物を作ることが多いという栗原。先日、小さな家族に向けて作ったのは、こんなミニバッグ。
「自分のスタイリングについては、おしゃれにこだわりのある父からの影響がとても大きいです」と濵﨑。時計もローファーもお父様から譲り受けたもの。「丁寧に手入れをして、ものを大切にすることを父からは教わりました」というその教えが日々の生活に色濃く反映されており、靴ベラについては、持ち歩き用と会社用(木製、合羽橋にて購入)を使い分けるほど。「出社して靴を履き替え、脱いだ靴にはシューキーパーも入れます」
さらなる二人の共通点としてペットがあるそう。「仕事の合間に、最低でも1日1回はお互いにペットの話をしていますね。共に多頭飼いしていて、どちらの家もペット同士の仲が悪いのも一緒なんです(笑)」と声を揃える。
上:栗原家のポーちゃん(右)、メル(左上)、プー。
下:濵﨑家のムム (右) とロロ。
濵﨑:Shinzoneの生み出す洋服は、一見ベーシックでも実はステッチが凝っていたり、シルエットを工夫していたり、生地の加工を何度もテストしたり……とディテールへのこだわりがたくさんあります。
栗原:また、特にジャケットやコートなどは仕立てが素晴らしく、シルエットの美しさを実感していただけると思っています。
濵﨑:まだまだ勉強中の私たちですが、お客様の声を真摯に受け取りながら、「なんだかいつもこればかり着ちゃう、履いちゃう」と愛用いただけるアイテムを作っていけたらと思います。
PHOTO:Nam. grafik
MAKE UP: YUKA NAKANISHI @ Know Who