-vol.02 大正紡績株式会社さんに訊く、ものづくりの話-
2026年3月。私たちShinzoneは創業から25周年を迎えます。それを記念して第1弾としてお届けするのは、究極の着心地とクオリティを目指しShinzoneの社員が一丸となって綿花の栽培から手がけたスウェット3種。「コットンプロジェクト」と名付けられたこのプロダクツは、確かなものづくりに定評のある大正紡績株式会社さんとタッグを組み、構想から完成に至るまで2年以上をかけて制作が進められてきました。
第2回となる今回は、紡績から生地になるまでのお話を、プロジェクトのパートナーとなってくださった大正紡績株式会社の赤松一人さんに訊きました。コットンのこと、紡績のこと。そしてものづくりの現場が抱える課題などスウェット作りを通して私たちが知ることになったさまざまな事実をお届けします。

--ご一緒にスタートさせていただいたプロダクツが、ようやく出来上がりました。コットン栽培と聞くと、ひたすら広大なアメリカやインドなど海外だけが産地と思われる人も多いかと思いますが、なんと大阪で育てられるとは!
社会の授業で教えてもらったアメリカのコットンベルトに代表されるよう、コットンは一般的に北緯40度から南緯35度の範囲でなら栽培が可能と言われています。日本も東北エリアまでがそのエリアにすっぽり入っていて、主に愛知県の岡崎を発祥(※諸説あり)とする和綿と呼ばれる短長繊維が生産されていました。用途としてはネルやキャンパス地、ふとん綿や不織布などに使用されることが多かったようです。

また今回栽培した土地も海から近いですが、実はコットンは塩分を吸収する植物。弊社も参画し今なおチャレンジが続いている東北コットンプロジェクトでは、東日本大震災の際に津波の被害にあった塩分の残る三陸沖の土地でコットンの栽培をしています。コットンは種まきをした後に、しばらく雨が必要なんですが、その条件だけクリアできれば、日本でも育てられないことはないんですよ。
--全てを私たちが作ったコットンで賄うことはできませんでしたが、うっとりする肌触りとクオリティの生地が出来上がりました。私たちが栽培したコットン、そして混紡したコットンと、材料について改めてその特徴を教えてください。
Shinzoneさんで育てたコットンのファイバーマックス5%とフォックスファイバーコットン、アメリカ産のオーガニックコットンである希少なアルティメイトピマを混ぜ紡績した糸をスウェットの表側に使用しています。
コットンは今、世界で26万トン生産されているのですが、そのうちオーガニックコットンが占める割合は実に1.5%。また超長綿と言われる繊維が長い上質なコットンが全体に占める割合は1.5%。さらにオーガニックコットンの超長綿であるアルティメイトピマは0.0003%となります。このアルティメイトピマは品質がとてもよいコットンです。そこに同じくアメリカ産のふっくらとして柔らかいオーガニックコットンのグリーンコットン(緑綿)を混紡しています。生地の裏側の糸には、アメリカのニューメキシコ州で契約栽培しているオーガニックのスーピマコットンを使った極甘撚糸を使用しています。撚りを弱くして編み上げることでふっくらとして吸水性のある仕上がりとなりました。

デザイナー染谷によるスウェットのデザイン画と私たちの作ったコットンが混紡された糸。
--大正紡績の皆さんには、私たちが畑に行けないときもコットンのお世話をしていただきましたが、改めてコットン出来はどうでしたか?

2024年のコットン栽培は、全体的に育ちが良くなかったですが、Shinzoneさんが栽培を担当された場所は6.7月は雨が少なかったわりに、育ちが良かったですね。コットン栽培は雑草駆除が大変で工場のメンバーが2週間に1回ほど駆除に行っていました。結果的に収穫量は30kgが獲れました。コットンボールはその6割が種。ジンニングと言ってそこから種を取り除かれると、残り12kg。またそこから短い綿(繊維)が紡績工程で落されるので残るのは9.6kg。最終的にShinzonesんが栽培されたコットンを3%混ぜて糸を作りました。一般的にしなやかで高品質と言われる超長綿は、栽培時期も長く天候リスクが高い上に、コットンボールが小さく種の割合も多いので、普通の綿に比べ収穫量が少なく、農家さんは生産しようと思いません。価格が高いんですが、農家さんにメリットが少ないようです。

--なるほど。コットンの値段はの手間と時間が反映されているわけですね。今回赤松さんからは、世界の繊維需要のうち、コットンは25%(なお、1位はポリエステルで57%、ウールに至っては実に1%!)とお伺いしました。とはいえ私たちの身の回りにはコットン製品が当たり前のように溢れていて、容易に栽培でき手に入ると思いがち。こんなに栽培に手間暇がかかるということが驚きでした。そして工場を見学させてもらい、働いていらっしゃる方たちのこだわりと真剣な眼差しが印象的で、その姿がとてもかっこいいなと思いました。何より、こんな丁寧で細やかなものづくりは日本でしかできないな、とも。今回の大正紡績さんとのプロジェクトを通じて改めて日本の技術の素晴らしさを教えていただいたように思います。
私たち大正紡績の特徴に古い機械が多いことがあります。最新の紡績機械だと高速スピードでワタを引っ張るのでコットンにストレスがかかるんですね。ですが、古い機械は回転数がゆっくりしているので、コットンにストレスがかからず丁寧に紡績でき、原料の良さを最大限に活かすことができます。また古い機械を扱うために、どの工程にも必ず職人が介在します。つまり機械ではなく、人が糸を紡いでいるようなものです。そこが他社さん(特に海外糸)との大きな違いでもあると思います。


大正紡績さんの工場から。それぞれの機械に職人さんが配されてその様子を常に見守る。真剣な眼差しでコットンや機械に向かう姿が印象的でした。
実際商品になるまでには、多くの人の手がかかっている。ということは表にはなかなか伝わりにくいことかもしれません。今回のShinzoneの皆さんの体験を通じて、ものづくりについて知ってもらえたことは良かったですし、ぜひ、お客様にもその体験をお話しいただけると嬉しいです。また、ものづくりの現場にいるものとしては、手間がかかり生み出されるものだからこそ投資価値があり、価格に反映されているということも、知っていただけるとうれしいですね。
コットンプロジェクトで手掛けたプロダクツはこちらからご覧ください!
Vol.01はこちら
Vol.03へ続く(公開は2026年2月下旬〜3月上旬予定)
EDIT&TEXT : SHINZONE